Dreaming Is Living

LA在住の音楽ライターが夢実現のヒントを綴ります

ケリー・クラークソン

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LA時間の8月19日(水)、
元祖アメリカン・アイドルケリー・クラークソンのステープルズ・センター公演(オープニング・アクトはペンタトニックス)を観に行きました。
このショウの最中、「ピース・バイ・ピース」という曲を披露する時に
ケリーが感極まって泣き出してしまい、慌てて「モロ妊婦だわ〜!」と、突然妊娠を発表するというサプライズがありました。
次の瞬間、約18000人の観客が爆発的な大歓声を挙げて、ケリーを祝福。とてもスペシャルで、涙腺が緩む場面でした。

「ピース・バイ・ピース」は、今年3月に発表された同名のニュー・アルバムに収録されている、とてもパーソナルな歌詞の曲。

アルバム・タイトルにもなっているので、新作の中で一番ケリーが思い入れがある曲だろうと思っていたのですが、予想通りケリーはこの曲をやる前に、
「これは私にとって特別な曲で、この曲のメッセージをみんなに聞いて欲しいから、ピアノ伴奏だけで歌うことにしたの」と語り始め、子供の頃、ロールモデルになる親がいないと、愛されることを信じるのが難しくなってしまうこと、
それでも今の夫に出会って、信じることができるようになったことを語り、

愛されるためには、まず自分を愛することが大事だと思うの
と締めくくって、この曲を歌い始めたのです。

すると間もなく、ケリーは声を詰まらせてしまいました。泣きそうになっていたのです。それだけ自分をさらけだしている曲だし、感極まってしまったんだろうなと思っていたら、そんな自分を笑い飛ばしてまた歌い始めた彼女が、再び声を詰まらせました。
そこで彼女は見るからに慌てふためいて、妊娠していると口走ってしまったのです。
大歓声に包まれた後は、いつも通りの圧倒的な歌唱力で、最後までこの曲を歌いきりました。

歌い終えた後は、
「こんな形で発表するつもりじゃなかったのよ!でも泣き出しちゃったし!みんなに何か変なクスリでもやってるんじゃないかって思われたくなかったから。今日はホルモンが出まくってるの。
でも何も問題はないのよ、全て絶好調よ!」
と説明して、場内に暖かい笑いを巻き起こしていました。
それから、
「どうしよ、次の曲、超悲しいわー。お願い、一緒に歌ってね」
と言って歌い始めたのが「ビコーズ・オブ・ユー」。
ケリー自身が作詞作曲した彼女の代表曲の一つで、私が勝手にケリーに共感を抱いてさらにファンになった曲。
この2曲が並んでいることには意味があって、
2005年に「ビコーズ・オブ・ユー」を歌っていたケリーが、
2015年に「ピース・バイ・ピース」を歌えるようになったこと、
それ自体がとても感動的なストーリーになっているのです。

 

ケリーの両親は彼女が小さい頃に離婚していて、ケリーは、母親が男性を信じるのに苦労しているのを見て育ちました。その気持ちを包み隠さず歌にしたのが、「ビコーズ・オブ・ユー」。

「あなたを見ていたから
信じることが難しくなってしまったの
私自身だけでなく、周りのすべての人達を
あなたを見ていたから
私は怖がっているの」

 

2011年、5作目のアルバム『ストロンガー』のリリース前に、
私はケリーの住むナッシュヴィルで取材をする機会を得ました。
そして取材の最後に、ものすごく緊張しながら、
「ビコーズ・オブ・ユー」が大好きな曲であることを伝えてから、とても個人的な質問をしました。

「私も問題がある家庭で育ったので、結婚とか、どこかで怖がっている気がするんです。あなたはどうやって乗り越えたんですか?」

ケリーは持ち前のカラっとした明るい声で、私の緊張を吹き飛ばすように言いました。
「私だって怖がってるわよー!
でもその怖れは、乗り越えるものじゃなく、生き抜いていくものなんだと思う。今だって大変よ。誰かとつきあっていると、良くない方向や疲れる方向に向かいがちなんだもの。
その中で、どうにかしようと頑張るんだけどね。
でも、本当に自分を理解してくれて、一緒に人生を歩もうとしてくれる人に出会えれば、そして、自分がその人と一緒歩もうとすることができればいいんだと思う

 

そう言っていた彼女は、彼女のマネージャーの息子のブランドン・ブラックストックと2013年の10月に結婚し、2014年の6月に女児(リヴァー・ローズ)を出産。
ケリーは取材で正直に語ってくれた夢を、叶えたのです。

そして生まれたのが、「ピース・バイ・ピース」です。
「ひとつひとつ
彼がもとに戻してくれた
私が信じる心を
男性は優しくなれる
父親はずっと一緒にいてくれる」


Kelly Clarkson - Piece By Piece (Audio) - YouTube

この2曲だけで、恋愛映画が作れそうな素晴らしいストーリー。
それが実話で、ファンがその物語を共有できたということが、本当に感動的だと思うのです。


ケリーはショウの間中、この失敗をずっと気にしていたようで、
「ショウの後、夫と話すのが心配だわー。まだ親戚でも知らない人がいるのにー!」
「でも、みんなにクレイジーな人だと思われたくなかったのよ。
まあ、私、ちょっとクレイジーだけどね。クレイジーじゃなきゃ、この仕事はやれないわ」と何度も話をぶり返しては、皆の歓声を浴びていました。

彼女の人柄がこの記事から少しでも伝わったら嬉しいのですが、
ケリー・クラークソンほど表裏のないスターには会ったことがありません。本当に素直で、自分を飾ろうとしない、嘘がつけない人。
アメリカン・アイドル』に出演していた時から、誰の目にもそれは明らかで、そんなケリーを、全米の人々は応援せずにいられなかったのです。
アレサ・フランクリンに及ぶのではないかと思うほどの見事な歌唱力も、
彼女が第一線のスターでい続けている理由ではありますが、
それ以上に彼女の人柄が、今も多くの人々に愛されている理由だと思います。
この夜、ステープルズ・センターに集まっていたのは、
ケリーと同世代の30代の男女だけでなく、
10代から50代まで、本当に幅広い年齢層のファンでした。
 
出産を終えたら来日公演を実現させて、日本の人達の心もわしづかみにして欲しいな。

 

Dreaming is Living!

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