Dreaming Is Living

LA在住の音楽ライターが夢実現のヒントを綴ります

アリアナ・グランデ

 2年ほど前から、アリアナ・グランデにはまっています。私のドライブ中の楽しみの一つが、アリアナの『マイ・エヴリシング』の一人カラオケ(たまにダンスつき)です。アリアナはデビュー・アルバム『ユアーズ・トゥルーリー』の時からプロモーションで日本に行っているので、夢の取材の機会はいまだ訪れないのですが、4月のロサンゼルス公演で生アリアナを観るという夢は叶いました(レポートはカーリー・レイ・ジェプセン表紙のINROCK最新号に掲載されます)。

 そんなわけで今回の記事は、アリアナ・グランデです。

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 アリアナのデビュー曲「ザ・ウェイ feat.マック・ミラー」がラジオでヒットし始めた時、私は一瞬、「マライア、声若返りまくったな?」と思ってしまいました。友達も騙されてました。やっている曲はR&Bだし、往年のマライアの歌唱力には至らなくても、かなりのハイトーンが出せるヴォーカルだし、例え曲が似ていなかったとしても、「ポスト・マライア」と宣伝用につけられてしまっていたのではないかと思います。マライアファンの多い日本では特に、アリアナに対してマライアを意識している人というイメージを持っていた人が多いのではないでしょうか。

 

 でもアメリカでは、もっと強烈なキャラのイメージが彼女にぴったりとくっついていたのです。それは、ニコロデオン(子供向けのチャンネル)のドラマ『サム&キャット』でアリアナが演じていたキャット・バレンタイン。キャットは高校生で、ルームメートのサムと子守りのバイトで生活しているのですが、気性が激しく男勝りなサムとは対照的に、超おっとりで超天然の子供っぽい少女。この番組は『ヴィクトリアス』という人気ドラマのスピンオフだったので、アリアナは2010年から3年間に渡ってキャットを演じ続けていました。演技の天才じゃないかと思うほどのはまり役で、アリアナとキャットを重ねて見ている子供達も多かったのです。でもある時、アリアナが取材で「演技は私のやりたいことじゃなかった、音楽が一番やりたいこと」と言っているのを目にしました。これは私の勝手な推測ですが、アリアナはアーティストとしてデビューするために、このピンクの髪のおかしなキャットのイメージとかなり戦わなければならなかったのだと思います。女優を夢見る少女達からみたら、アリアナは女優としてこれ以上は望めないほど成功している最中だったのに、彼女はその成功を踏み台にして、音楽に打ち込んでいくのです。


 アリアナのデビュー・アルバム『ユアーズ・トゥルーリー』がヒットした2013年は、まだ『サム&キャット』の放映が続いていました。そこからアリアナは、昨年のセカンド・アルバムに向けて、段々と自分のスタイルを作って行きます。そして2014年、『マイ・エヴリシング』からのファースト・シングル「プロブレム feat.イギー・アゼリア」の発表を境に、いっきに21歳の大人になったセクシーでキュートなアリアナを売り出したのです。それからは「ブレイク・フリー」、「バン・バン」、「ラヴ・ミー・ハーダー」と、ヒット曲に次ぐヒット曲の連続で、2014年のポップシーンは一年を通してアリアナがリードしていました。その成功が、セカンドアルバムにして全米のアリーナを回る2015年のツアーにつながったのです。ロケット発射並みの勢いの急成長でした。


 アリアナのアーティストとしての成功には、自己プロデュース力が大きくかかわっていると私は考えています。そして、そのプロデュースの仕方が、半端じゃない。ど根性そのものです。スターは誰もがあり得ない位の努力を重ねていますが、アリアナの努力は、「ザ・アリアナ道」とでも名づけたいほど気合いが入っています。


 まず、彼女は女優としての成功をフルに使ってアルバム・デビューし、アーティストとしての道を自分で切り開きました。これが最初の自己プロデュース。その後、アリアナ・グランデとしてのイメージを自分の力で確立させる努力を始めます。それは、現在のアリアナのスタイルとルックスによく表れています。上の写真はロサンゼルス公演時のものですが、この15センチヒール、半端ないですよね。ストリッパーの方々が履くのと同じ高さで、一般人は歩くのだって困難です。アリアナは常時これ位のヒールを履いて颯爽と歩いていますが、コンサートでも常に超ハイヒールかブーツで、スニーカーを履いているみたいに軽快に踊り、歌い続けます。しかも美しい笑顔を絶やさずに。しかも口パクなしで。ど根性です。


 アリアナが自分が小柄であることに対して不満を言っている発言は目にしたことがありませんが、彼女は自分の見た目を熟知していて、ファッションで理想の姿に調整をしています。だから超高いヒールだし、足が長く見えるようにミニスカートかショーツなのです。髪型もそう。いつもサイドの髪を上でまとめていますが、これはちょっとたれ目な目をクール・ビューティ系にするためだと私は勝手に想像しています(ある取材では、キャット役で髪をブリーチしすぎて酷いダメージを受けてしまい、ポニーテールにするしかなくなったと語っていましたが)。いつもくっきりと入っている太めのアイライナーもクールに見せる工夫です。このイメージを定着させる前の彼女は、下の写真(2013年9月のロサンゼルス公演時)のように、もっと甘くて可愛らしいイメージでした。フレアスカートが良く似合っていました。

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 でも、今はスイートなエロカワといった感じですよね。これが今作のイメージなのか、今後も定着させたい姿なのか、それは聞いてみないと分からないけれど、このルックスのアリアナは、アニメのキャラみたいにもう誰の頭でも連想できる。これってすごい戦略じゃないでしょうか。レディー・ガガは外に出る度に衝撃的なアートをファッションで見せるイメージがあるし、リアーナはギリギリの露出度で自由奔放にセクシーでいるというイメージがあるように、現在のアリアナのイメージは、同じ髪型で厚底ヒールで健康的な美脚を見せる「アリアナ・グランデ」になったのです。
 彼女の音楽もそう。「私の全て」という名前からも明らかだけれど、『マイ・エヴリシング』というアルバムで、彼女は様々な歌声と様々な表情であらゆる面からアリアナ・グランデの姿を見せてくれる。彼女は自分で作曲をしてはいないけれど、そこにあるのは本当にアリアナだけが作り上げられる世界で、ただ単にヒットしそうな曲を並べて歌ったというだけではない完成度の高い「アルバム」になっている。だから単なるR&Bアルバムに終わらない強烈な個性と新しさがある。彼女はまだ21歳。本当に凄いです。

 

 自分の道も、自分の姿も、自分が決める。
 自己プロデュースは大事、とアリアナの姿に思うのです。

 そして最後に、これは努力という意識もなくやっていることだと思いますが、アリアナはファンへのラブコールも凄いです。デビュー当時から、毎日ツイッターで何度何度も「みんな、愛してるー♡」をあの手この手でファンに送り続けています。しつこいくらい何度も言われても、不思議なことに本気で言ってるんだなっていう感じがツイッターからちゃんと伝わってくる。それだけ愛してくれたら、私達だってもっと愛したくなっちゃいますね。また、日本びいきで、日本のファンのために日本語を習って日本語でツイートしたりしてくれるところも、「ザ・アリアナ道」だなと思います。ちなみに今回の「ハネムーン・ツアー」は、アリアナがずっとネコ耳をつけているだけでなく、ネコ耳型のライトがマーチャンダイズで売られていて、会場内はネコ耳だらけ。このネコ耳をアリアナが発見したのはどこだと思います? 日本です! ネコ耳をつけたアリアナのイラスト(6月発表になる日本限定のリミックス盤『ザ・リミックス』のジャケット写真と同じ)に「アリアナ・グランデ」とカタカナで書かれたTシャツも売られていました。

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アリアナ、日本を愛してくれて、ありがとう♡

 

Dreaming is Living!
Have a nice weekend!